離乳食を始めていない乳児にも食物アレルギー症状がみられることから、経母乳感作の可能性が示唆されている。我々は昨年度主要食物アレルゲンであるオボムコイドが母乳中ではIgAとの免疫複合体として存在していることを明らかにした。今回はさらに抗原特異性、乳児のアレルギーとの関連について検討を進めた。 アトピー性皮膚炎疾患児をもつ母親から母乳の提供を受け、324検体について解析を行った。ほとんどの検体においてオボムコイド・IgA免疫複合体が検出されたが、ゲル濾過解析の結果ではオボムコイドは免疫複合体の位置にのみ検出され、単体の位置には検出されなかった。同様の結果は牛乳アレルゲンであるβ-ラクトグロブリンでもみられたが、オボアルブミンでは2検体で単体の位置でも検出された。またオボムコイド特異的IgAが検出された母乳に10μg/mlになるようにオボムコイドを添加し、ゲル濾過解析を行ったところ、オボムコイド・IgA免疫複合体量は増加し、オボムコイド特異的IgA量は減少した。アレルギー疾患との関連においては、母親の鶏卵摂取量が多いほど母乳中のオボムコイド特異的IgA量が増加する傾向にあった。アレルギー疾患を持たない乳児の母親から提供された母乳でも同様の結果が得られた。以上の結果、乳児の食物アレルギーを考える場合、食物抗原と特異的IgA抗体のバランス、さらにその母乳を摂取した時の乳児の免疫系の状態が重要ではないかと考えられる。
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