オボムコイドに対するサンドイッチ酵素免疫測定法を確立し、37検体の母乳中12検体に0.3〜37ng/mlのオボムコイドを検出できた。ゲル濾過分析の結果、本来分子量28kDaのオボムコイドが母乳では分子量約450kDaの位置に溶出され、分泌型IgAとの免疫複合体として存在していることが予測された。事実、抗オボムコイド抗体とアルカリホスファターゼ標識抗ヒトIgA抗体を用いた酵素免疫測定法により、オボムコイドの溶出パターンとそのIgA免疫複合体の溶出パターンが一致する事が確認された。 その後、324検体についても同様の解析を行ったところ、ほとんどの検体においてオボムコイド・IgA免疫複合体が検出された。ゲル濾過解析の結果、オボムコイドは免疫複合体の位置にのみ検出され、単体の位置には検出されなかった。同様の結果は牛乳アレルゲンであるβ-ラクトグロブリンでもみられたが、オボアルブミンでは2検体で単体の位置でも検出された。またオボムコイド特異的IgAが検出された母乳に10μg/mlになるようにオボムコイドを添加し、ゲル濾過解析を行ったところ、オボムコイド・IgA免疫複合体量は増加し、オボムコイド特異的IgA量は減少した。アレルギー疾患との関連においては、母親の鶏卵摂取量が多いほど母乳中のオボムコイド特異的IgA量が増加する傾向にあった。アレルギー疾患を持たない乳児の母親から提供された母乳でも同様の結果が得られた。消化吸収系の未発達な乳児において、アレルゲンを免疫複合体とすることでその腸管での吸収を阻害し、アレルギー発症を抑えているのかもしれない。さらに、腸管免疫の特徴であるIgAへのクラス変換や免疫寛容都との関連に興味が持たれる。
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