研究概要 |
これまでの現地調査によって把握した、北海道沙流川流域と空知川流域における計59流域の土砂輸送レートについて、その規定要因を流域地質および可川水系スケールの地形的観点から解析した。土砂輸送レートは、ダム地点における上流単位面積あたりの年平均流出土砂量として定義された。得られた結果は以下のとおりである。 1.流域面積が大きいほど、土砂輸送レートは小さく、また流域間でのレートのばらつきも少なくなる。これは河川水系スケールで見た場合に、上流域ほど侵食がより活発であることと、下流域ほど土砂滞留空間が増加することの両方の反映である。輸送レートのばらつきに関しては、上流の小流域ほど個々の流域が持つ土砂生産特性(活発さ)が輸送レートに直接反映されてばらつきが大きいが、大面積の下流地点になるとそれらが平均化されて輸送レートのばらつきが小さくなる、と説明される。 2.同程度の流域面積(1〜10km^2の範囲)で比較すると、輸送レートは流域地質によって明瞭に異なり、活火山ならびに新第三紀堆積岩流域で平均2000m^3/km^2/yr程度、白亜紀堆積岩流域で平均350m^3/km^2/yr程度、蛇紋岩流域で平均170m^3/km^2/yr程度、深成岩流域で平均100m^3/km^2/yr程度である。この結果は、一般的に認められる地質ごとの侵食特性と調和する。 3.最も広く分布する白亜紀堆積岩の流域のみを抽出し、同一地質条件下でさらに地形要因を検討した。その結果、谷幅の広い流域で輸送レートが一様に小さく、谷幅の狭い流域でレートがばらついた。谷幅と流域面積が,無相関であることを確認したので、この結果より谷幅が土砂滞留の容量を表していると言える。さらに谷幅が広い流域の中では河床勾配が急なほど輸送レートが大きく、土砂豊富な条件下では勾配が輸送レートを規定する。
|