森林土壌におけるスレーキング現象による団粒崩壊の発生条件を明らかにするため、以下のような室内培養実験を行った。 ヒノキ林のA層上部から採取した土壌試料から4mm程度の団粒を選定して、500ccのビーカー中に20個ずつ並べ、恒温恒湿器内で培養した。培養は、風乾状態のまま、乾燥、湿潤の繰り返し、湿潤状態のままの3条件で、14日間行った。培養後に試料を風乾してふるい分けを行い、団粒の崩壊状態を調べた。その結果、乾燥・湿潤の繰り返しを行った試料で2mm未満の団粒の割合が多くなり、団粒の崩壊が進んだことがわかった。この実験から、森林土壌においても、乾燥・湿潤を繰り返すとスレーキング現象によって団粒の崩壊が起こることが確かめられた。 つぎに、スレーキングに対する団粒径の影響を検討するため、7mmの団粒を用いて同様の実験を行った。その結果、乾燥・湿潤の繰り返しを行った試料で5mm未満の団粒の割合が多くなり、団粒の崩壊が進んだことがわかった。ただし4mmの団粒を用いた実験に比べると団粒の崩壊率は低くかった。以上から、団粒径が大きい方がスレーキングによる団粒崩壊は起りにくい可能性があると考えられた。 また、実際の森林伐採地における伐採後の団粒崩壊を追跡調査した結果について解析した。その結果、伐採後に団粒崩壊が長期間にわたって進行していることが明らかになった。この伐採地では伐採・搬出作業に伴う地表面の撹乱の影響は少なく、伐採後には地表面が草本類によって被覆され、有機物量の減少も起らなかった。以上から、地表面撹乱や雨滴衝撃、有機物量の減少が団粒崩壊の原因となっている可能性は低いと考えられた。一方、伐採後には土壌表面の乾燥が著しいことから、乾燥・湿潤の繰り返しによってスレーキングによる団粒崩壊が起ったと考えられた。
|