森林土壌におけるスレーキングによる団粒崩壊の発生条件を明らかにするため、以下の室内培養実験を行った。ヒノキ林からA層上部の土壌試料を採取し、風乾後にふるい分けたものを団粒試料とした。直径11.5cm、高さ4.2cmの金属製容器内に石英砂を充填して濾紙を敷き、その上に直径4mm程度の団粒試料を20個ずつならべたものを培養試料とした。培養は、湿潤状態のまま(W)、乾燥・湿潤の繰り返し(DW)の2条件で、Wでは石英砂を飽和させた状態で、DWでは石英砂を乾燥させた状態で恒温恒湿器内(温度30℃・湿度85%)で14日間行った。培養中は両条件ともに1日おきに団粒試料に60〜100μlずつ蒸留水を加えた。培養後に試料を風乾してふるい分け、団粒の崩壊状態を調べた。その結果、乾燥・湿潤の繰り返しを行った試料で2mm満の団粒の割合が多くなり・団粒の崩壊が進んだことがわかった。この実験の結果と500mlビーカー内に団粒試料を並べ培養試料とした実験(平成12年度実施)の結果を比較したところ、本実験の方が団粒崩壊程度が低かった。その原因として、石英砂上での培養の方が蒸留水給水時の団粒試料の水分吸収速度が遅くなることなどが考えられ、団粒の水分吸収速度がスレーキングによる団粒崩壊に影響することが明らかになった。また、飽和石英砂上での培養では団粒試料が常に飽和に近い状態にあることが確かめられ、この方法により長期的な培養実験が可能になった。つぎに、スレーキングに対する団粒の安定度を樹種別に比較する目的で、ヒノキ林・カラマツ林・落葉広葉樹を主体とした林分(以下、広葉樹林とする)からA層上部の土壌試料を採取し、湿式団粒分析を行った。その結果、団粒安定度は広葉樹林で最も高く、次いでヒノキ林、カラマツ林の順となった。このことから、伐採後の団粒崩壊についても、樹種による差異が生じる可能性があると考えられた。
|