スレーキングに対する森林土壌の団粒の安定度について、樹種の違いや、団粒径がどのように影響するか検討するため、以下の培養実験を行った(培養実験1)。コナラやミズキを主とした広葉樹林とヒノキ人工林のA層上部から、直径約3mm、約4mm、約5mmの団粒を採取して団粒試料とした。400cc採土円筒内に石英砂を厚さ2cm充填し、その上に団粒試料を並べ培養試料とした。培養は湿潤状態のまま(W)、乾燥・湿潤の繰り返し(DW)、風乾状態のまま(D)の3条件で14日間行った。培養後にふるい分け試験と団粒分析を行った。その結果、広葉樹団粒・針葉樹団粒ともに乾燥と湿潤を繰り返したDWで団粒の崩壊が進み、団粒径が小さいほど顕著であった。しかし、樹種別では団粒崩壊程度に大きな違いはなかった。温度上昇に伴う土壌微生物の活性化が団粒崩壊に影響するかを明らかにするため以下の培養実験を行った(培養実験2)。ヒノキ人工林から採取した約4mmの団粒を培養実験1と同様に石英砂上に並べ培養試料とした。培養は湿潤状態で70日間行い、温度は15℃と30℃の2条件をした。培養開始後一定期間ごとに培養試料を取り出し、土壌微生物の加水分解酵素活性の測定、ふるい分け試験、団粒分析、全炭素・全窒素の測定を行った。その結果、培養14日後には温度15℃・30℃ともに団粒の崩壊が進んだことが明らかになった。また、団粒指数は温度15℃・30℃ともに培養期間が長くなるにしたがい低下し、とくに30℃で顕著であった。加水分解酵素活性は30℃の方が培養期間を通して高かった。加水分解酵素活性の積分値と団粒指数との間に負の相関が認められ、微生物活動の活発化が団粒の耐水性を低下させ、団粒崩壊が起こると考えられた。以上から森林伐採後の団粒崩壊には、乾燥・湿潤の繰り返しによるスレーキングと、地温上昇に伴う土壌微生物の活性化が影響することが明らかになった。
|