研究概要 |
本研究においては,森林伐採後の団粒崩壊のメカニズムを明らかにすることを目的とし,スレーキングと土壌微生物の活性化に伴う団粒崩壊について,培養実験により検討を行った。スレーキングによる団粒崩壊については,樹種や団粒径によって若干の差異があったものの,乾燥と湿潤を繰り返す培養条件で団粒の崩壊が顕著で,スレーキングによって団粒の崩壊が起こったことが認められた。また,スレーキングに対する団粒の安定度には樹種による差異はほとんど認められなかった。その一方で,団粒の安定度には粒径の違いが大きく影響し,大きい団粒ほど安定度が高いことが明らかになった。さらに,団粒試料の全炭素量・全窒素量の測定結果などから,スレーキングに対する団粒の安定度には,有機物量よりも団粒内部への水の浸透速度が大きく関わっていると考えられた。土壌微生物の活性化に伴う団粒崩壊については,30℃で培養した団粒試料の方が15℃よりも培養期間全体を通して微生物活性が高く,団粒の崩壊が進んだことが明らかになった。微生物活性の積算値や積分値と団粒指数とが高い負の相関を持つことなどから,団粒崩壊に土壌微生物の活性化が大きく関与することが示された。しかし,全炭素量・全窒素量の変化に一定の傾向がみられず,有機物分解と団粒崩壊との関連を明らかにすることはできなかった。以上の結果から,室内での培養実験という限られた条件下ではあるが,森林伐採後の土壌環境の変化の中で,スレーキングや土壌微生物の活性化によって団粒崩壊が起こり得ることを定量的に示すことができた。
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