節足動物群集の質的・量的特性の把握と森林タイプごとの環境収容力の評価を目的として、森林性鳥類の餌資源という側面も視野に入れ、林相、樹種組成・特性の大きく異なる広葉樹林、スギ人工林、カラマツ人工林を対象として、おもにclipping(枝葉採集)法によって、節足動物の群集構成や個体数・現存量、および樹木の量的特性とそれらの関連性について調査を行った(継続中)。また、単木ごとの生枝下高直径-葉量間の相対成長関係をもとに、clippingによる節足動物データと毎木調査から樹上節足動物群集の密度を推定する方法を開発し、さらに単木レベルから林分レベルへの密度推定の拡張についての見通しを得た。スギ、カラマツの予備調査の結果では、5月〜11月の間に、単位葉量あたりの樹上節足動物の個体数は、スギで30〜100、カラマツで150〜18900[kg^<-1> d.wt]、現存量ではスギで100〜600、カラマツで700〜32700[mg f.wt kg^<-1> d.wt]と、いずれもカラマツの方が大きい値を示した。また、単木あたりの密度推定でもスギに比べてカラマツの方が、個体数、現存量ともに豊富な節足動物群集を維持していた。群集構成では、個体数、現存量ともに鱗翅目幼虫、半翅目、膜翅目幼虫、鞘翅目昆虫とクモ類が優占的であった。 またこれとは別に、各森林の林床に糞収集トラップを設置し、林分間の鳥類餌資源としての樹上の節足動物群集、とくに鱗翅目昆虫の現存量の推定と林分間の相対的な評価を行うために落下糞量の解析を進めている。
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