研究概要 |
山腹斜面の中腹から下部の5点において,土壌水分量,土壌温度,土壌有機物量の観測を行った.観測期間は,2000年11月7日から11月14日である.この期間の気温は2℃から17℃であり,比較的広範囲の気象条件をおさえることができた.地温の測定深は表層1cm,10cmおよび40cmであり,土壌水分量の測定深は10cm,40cmである.各地点間の土壌呼吸量の相違は,この期間の経時変化に匹敵する差を有していた.しかし,地温や土壌水分量は地点間の差に対してこの期間の経時変化量が卓越していた.各地点とも土壌呼吸量と地温の関係は,表層地温がもっとも相関が高かった.各地点で表層地温に対する土壌呼吸量の反応は異なっていた.この各地点毎の土壌温度に対する反応の相違は単純に土壌水分量で分類できなかった.各地点で,表層地温の昇温過程より降温過程のときのほうが同じ温度に対する土壌呼吸量は大きくなった.さらに,特徴的ことは,斜面最下部において最も土壌呼吸量が小さかったことである.この地点は土壌水分量がもっとも小さかった地点でもあった.これは,斜面の土層厚が斜面底部ほど厚い傾向にあり(80cm以上),斜面下部の土壌水分は土層の低部を流れるために土壌表面が観測しているためと考えられた.各地点の土層厚は斜面高度とは無関係であったが,土壌呼吸量とは負の相関関係が示唆された.つまり,斜面部位というカテゴリーだけでは土壌呼吸量の分布を整理できないことを示している.また,土壌有機物量は,土壌呼吸量の地点間の差の妥当性を裏付ける結果となった.観測期間中に林内で約10mmほどの降水があり,土壌水分が特に表層で増加した.しかし,この影響は,土壌呼吸量と表層地温の関係を変化させることはなかった.これは,降水前においても土壌水分量は圃場用水量に近い水分状態であり比較的十分な水分量があったためと考えられる.
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