研究概要 |
斜面における土壌呼吸量の分布特性と水・熱移動の関係を,一般化してゆくために,東シベリア山岳タイガ林において,士壌呼吸量と土壌水分および地温の斜面分布を観測した.観測期間は,2001年5月13日から19日(消雪直後,春期)と2001年7月27日から8月14日(夏期)の2期間である.春期は樹木が展葉を開始した期間である.観測対象斜面は河川から流域尾根上までの斜面で水平距離は340m,標高差は76mである.斜面下部は緩斜面であり水平距離120mあり,以降は急斜面である. 林床面CO_2湧出量については,急斜面の方が若干大きいと判断された.この斜面分布は主として林床面温度もふくむ地温が急斜面の方が高かったためであった.これには,大気の鉛直構造,コケの断熱効果と水分保持効果,森林構造,土壌水分による熱容量の変化そしてこれらと相互に関係する凍土面の深さが影響していると考えられた.土壌水分は,緩斜面は湿潤であり,急斜面は乾燥していた.これは,地形によることは当然であるが,そこに,コケの断熱効果と土壌水分による凍土面への影響やコケの水分保持効果が相互に関係しながら土壌水分の両斜面の相違を形成していると思われた.土壌水分は直接的には斜面分布には影響しておらず地温形成を通して影響していると思われた.コケの林床面CO_2湧出量との関係は今後の解析を待たなければならない.
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