研究概要 |
本研究は,火山地域で発生している地下水に起因した崩壊のメカニズムを解明するとともに発生場を予測するための基礎データを得ることを目的としている。南九州火山地域に試験地を設け,地形学と水文学を総合した調査を行った。今年度に得られた成果は以下のように要約される。 1.シラス谷の低水時の流量は,シラス堆積前の基盤地形から推定した地下水集水域面積によく対応した。したがってシラス台地内の地下水はこの基盤地形に規制されて移動しているとみてよい。シラス斜面脚部の崖錐壊の発生位置は基盤地形において谷や凹地に分布している。シラス谷における低水時の流量は,崖錐崩壊とそれを発生源とする土石流のおそれがあるシラス谷を抽出するための指標として有効であると考える。 2.シラス斜面脚部の崖錐内の地下水位は降雨から数時間で上昇をはじめる。これは,台地面から浸透してシラス層内のガス抜けパイプや冷却亀裂に入った雨水がパイプ流として素速く基盤まで達し,台地周縁脚部から流出していることに起因していると考えられる。 3.一方,シラス斜面崖錐部の地下水位変化には降雨から数カ月〜6カ月程度遅れて反応する長期的な変動もみられた。これはシラス層内をマトリックス流として移動する遅い雨水移動に起因していると考えられる。遅い雨水移動による崖錐地下水位の高い状態と大雨時の速い雨水移動による地下水位の急上昇が重なると崖錐崩壊の危険が高まる。シラス斜面脚部の崖錐崩壊発生の予測には崖錐地下水位の長期的な変動と大雨時の急上昇の両方を考慮する必要がある.
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