研究概要 |
初年度にあたる本年度は、そもそも表面割れはどういう状況で発生するのかということを確認するために、東京の初夏から冬にかけて、3回のスギ柱材の天然乾燥試験を実施して、それぞれの乾燥中の表面割れ発生状況を観測することに主眼をおいた。試験の結果、乾燥開始時の含水率が高い(100%以上)の試験材では、割れ発生開始が遅くなり、最終の割れ発生率も小さくなった。一方、初期含水率が比較的低い(50-60%)の試験材は、乾燥開始後1,2日に割れ発生が認められ、その後も増加し、最終の割れ発生率も高いことがわかった。 実際の天然乾燥実験と並行した室内モデル実験として、温度20、30、50℃、相対湿度30,50,60,90%の環境下での同じくスギ柱材の生材からの乾燥実験を行い、表面割れ発生時の材の水分状態に関して、水分傾斜および材表面における蒸発水分量の測定を行なった。 温度設定の50℃は、実際に日射の直射を受ける場合に材がこうむる温度であることを本年購入したサーグラヒィーにより確認している。 表面割れ発生に関しては、今回の温度条件湿度条件下では、湿度の変化によりその違いが明らかに出た。すなわち、湿度が低いほうが発生が早かった。一方、表面割れ発生時の材表層における水分傾斜は、表層1mm以内の範囲で評価すると、繊維飽和点以下でかつ含水率差が10%前後になっている状態で割れ発生が確認された。 さらに、割れ発生時の材料表面の蒸発水分量の結果では、外部温度湿度の違いに係わらず、10g/m2h以下になった時点で割れが発生するという傾向があった。表面蒸発量は天然乾燥に関する割れ制御指標としの可能性を秘めている。 次年度以降には、本年度計画していて達成できなかった割れに関する詳細な実験を試みる。
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