研究概要 |
還元的なアミン化法を用いて、ビオチンヒドラジド化合物を糖鎖の還元末端に導入し、これを金コロイド標識されたストレプトアビジンと作用させることにより、還元末端を選択的にラベルして電子顕微鏡で可視化する方法を見出した。 基質の天然セルロースIには海藻のシオグサの細胞壁を精製した。また精製したシオグサ細胞壁を超臨界アンモニア処理してセルロースIIIを得た。セルロースIIは、ラミーの繊維の両端を固定したままアルカリ処理し、繊維状マーセル化により作成した。α-キチンは、薩摩湾海底熱水噴出口付近のカニの甲羅から精製し、β-キチンは、ハオリムシの棲管から精製した。これらの基質を酸加水分解して微結晶としたものに、上述の還元末端染色法を施した。 その結果、セルロースI、III,β-キチンについては、そのミクロフィブリルの片端のみがラベル化されたことから、平行鎖であることが判明した。一方逆平行鎖といわれるセルロースIIとα-キチンについては、微結晶の両端がラベル化されることは極めて少なく、ほとんどの場合は片端がラベルされた。以上の問題点として、(1)反応の効率がある種の試料では十分ではない。(2)セルロースIIおよびα-キチンの良好なフィブリル状試料作成が困難であるという点があげられる。そこで、セルラーゼのセルロース結合モジュールを用いた新しい還元末端識別の試みと、セルロースおよびキチンオリゴマーを用いた単結晶調製を開始した。
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