研究概要 |
4種類の天然型フェニルプロパノイド配糖体、アクテオシド(1)、コナンドロシド(2)、プランタマジョシド(3)、およびイソアクテオシド(4)の合成を行い、フェニルプロパノイド配糖体ライブラリーの一部を構築できた。いずれの化合物についても全合成に成功したのはこれが最初の例である。 合成方法は新規に開発した方法を用いた。即ち、2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル2,6-ジ-O-アセチル-4-O-カフェオイル-β-D-グルコピラノシド(A)を中間体として用い、これにラムノース、キシロース、グルコース各残基をそれぞれイミデート法により導入して化合物1、2、3の各アセチル・ベンジル誘導体の合成を行った。これら各誘導体の脱保護反応の内、脱アセチル化はメチルアミンを用いてカフェー酸エステルと選択的に脱離できた。この過程で、反応条件を制御することにより化合物1から化合物4のベンジル誘導体に変換する方法を確立した。つづく脱ベンジル化反応は、パラジウム炭素触媒下1,4-シクロヘキサジエンを水素源として用いる全く新しい反応条件を見出し、これにより行った。この方法は本研究を進める過程での「思いがけない発見」であったが、α,β-不飽和二重結合共存下でもベンジル基のみを還元・脱離できる極めて適用範囲の広い有用な方法として特筆できる。 これらの合成化合物1〜4の生物活性試験の予備実験を行った。抗植物病原菌活性試験については有為な結果が得られたので、現在本実験の準備を行っている。小動物への鎮痛作用試験では、一個体につき10-100mg以上の投与量が必要であるとの結果が得られた。来年度はより少量でアッセイ可能な細胞レベルの実験に切り替える予定である。また、レクチンとの結合性試験を行った結果、化合物2、3に大きな結合性が確認された。レクチン結合性実験については今後さらに検討したい。 A:2-(3,4-dihydroxyphenyl)ethyl 2,6-di-O-acetyl-4-O-caffeoyl-β-D-glucopyranoside 1:2-(3,4-dihydroxyphenyl)ethyl-O-α-L-rhamnopyranosyl-(1→3)-4-O-caffeoyl-β-D-glucopyranoside 2:2-(3,4-dihydroxyphenyl)ethyl-O-β-D-xylopyranosyl-(1→3)-4-O-caffeoyl-β-D-glucopyranoside 3:2-(3,4-dihydroxyphenyl)ethyl-O-β-D-glucopyranosyl-(1→3)-4-O-caffeoyl-β-D-glucopyranoside 4:2-(3,4-dihydroxyphenyl)ethyl-O-α-L-rhamnopyranosyl-(1→6)-4-O-caffeoyl-β-D-glucopyranoside
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