研究概要 |
栽培きのこの菌糸生育に及ぼす核酸関連物質の効果について検討した。試験にはシイタケ,ナメコ,マイタケ,ブナシメジおよびエリンギを取り上げ,核酸関連物質として,リボ核酸(RNA-M)と5'-ヌクレオチド混合物(RNA-Nt)を用いた。RNA-MとRNA-Ntはいずれのきのこに対しても菌糸生育促進効果を示した。液体,寒天,木粉培地と培地形態を変えて検討したが,液体培地ではRNA-Nt添加で効果が高く,寒天と木粉培地ではRNA-Mの方が顕著な生育促進効果が表れた。寒天培地では0.5%,木粉培地では1.0%の添加率で極大値がみられ,シイタケの場合生育率で表すとそれぞれ,141,151となった。 ついで,実際の栽培規模で試験を行った。添加物の投与方法として,核酸関連物質水溶液による培地調製時と子実体発生終了時への培他の浸漬処理の2方法で行った。培地調製時の添加では子実体収量が増加し,子実体が大型化した。またこの効果は、RNA-NtがRNA-Mよりも高かった。浸漬処理による添加では,RNA-Ntによる浸漬処理で子実体が大型化した。次に,菌床によるシイタケ栽培者の栽培施設を用いてRNA-Mを培地調製時に添加して子実体収量を検討した。培地絶乾重量の0.73%の添加量で収量の増加と形質の向上が認められた。1.46%の添加量で,培地表面がカビ類に汚染され収量は減少した。 以上の結果より,核酸関連物質はシイタケ菌などの食用きのこの菌糸蔓延に促進効果をもたらし,実際の菌床栽培で子実体収量増加,子実体形質向上など有効な添加物として活用できることが明らかになった。
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