研究概要 |
【目的】 ヒラメは活発な鉛直遊泳を行うことが知られている。自然海域においてデータロガーをヒラメに装着することによってその遊泳速度・遊泳姿勢・遊泳に伴う魚体振動数,さらに遊泳水深・経験水温を同時に記録し,記録された各パラメータを用いてこの行動の機能を明らかにした。 【方法】 実験海域は,本年度春期に予備放流調査を行った結果,十分な回収率が見積もられた津軽海峡沿岸域の北海道知内町沿岸とした。平成12年11月11日14時頃に加速度センサ搭載型データロガー(PD2GT)を装着したヒラメ成魚10尾(全長:60.6〜70.2cm,体重:2.2〜3.4kg)を知内町沖合2km、水深20mの地点に放流した。 【結果と考察】 平成13年2月末までに2尾の回収に成功し,それぞれ124,36時間にわたる連続行動記録を得ることに成功した。ヒラメは放流日の日没直後から活発な鉛直遊泳を繰り返し、放流地点から水深10mの海域まで移動した。上昇時には体を振動させた遊泳状態にあるが、下降時は体をフラットに保った滑空状態であり,下降時には遊泳せずに水中重量を利用して移動できることがわかった。またヒラメは,移動距離の長短によって鉛直遊泳と水平遊泳を使い分けている可能性が示唆された。ある距離を移動するときの魚体振動数を比較すると,鉛直遊泳で移動した場合には水平遊泳に比べて約70%に振動数を節約できると試算され、鉛直遊泳行動は本種の長距離移動に伴う消費エネルギー軽減に機能していることが示唆された。
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