エゾバフンウニ斑点病原因菌Flexibacter sp.の低水温環境における生残性、VBNC状態にある本菌の検出法およびVBNC状態からの蘇生を検討した。得られた主なる成果は以下の通りである。 1.本病原因菌は、75%ASW中5℃で保持すると、約15日でコロニー形成能を消失した。この状態の菌体は、VBNC状態にあることが明らかになった。VBNC状態移行菌体は、短桿状または球状に近い形態を呈し、ウニに対する病原性は消失していた。 2.VBNC細胞を特異検出するためのプライマーセットを、16S rRNAの塩基配列から作成した。本プライマーセットは、原因菌およびそのVBNC細胞以外には増幅産物が見られなかったことから、原因菌の特異検出の可能性を示唆した。 3.VBNC状態からの蘇生を検討した。塩化第二鉄溶液を0.0017%(約60μM鉄濃度)の割合で加えた75%ASWの系とウニ成分を添加した75%ASWの系で5℃から25℃への温度のシフトアップにより蘇生がみられた。ウニ成分添加75%ASWの系では、鉄添加の系では鉄無添加の系でよりもより長いVBNC状態からの蘇生がみられた。蘇生細胞は、主なる性状、元株抗血清との凝集性、ウニに対する病原性、細胞形態などの点で元細胞と一致した性状を示した。 以上の結果から、本病原因菌は、低水温期にVBNC状態となりウニ個体表面などに付着して生残し、高水温期にVBNC状態から蘇生して、再び本病を発生せしめる可能性が強く示唆された。
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