研究概要 |
本年度は,計量魚群探知機を用いて,海底からの反射の波形について1回の反射ごとにウェーブレット解析を行い,波形の特徴を圧縮し,人口知能の手法の一つであるニューラルネットワークを用いて海底判別を行なうシステムを構築するとともに,海藻や海草などについては,草丈や密度の情報を取り込むことができるようにするための開発を行なった.このようにして開発した装置の現場海域における実証試験を,海藻,海草,砂地,岩盤の分布する神奈川県三浦半島油壷湾にある東京大学理学部附属臨海実験所地先において行なった.その結果,海底を判別しながら,同時にDifferential GPSからの信号を取り込み,パーソナルコンピュータ上に船位と海底の種類を表示することに成功した.判別した結果を向上させるため,さらに学習させて未学習の海底地形について判別させたところ,ほぼ90%程度の正解を得ることができた.今後は,装置の小型化に取り組む必要がある.伊豆諸島海域の海山に分布する底層魚類であるキンメダイ資源を音響を用いて調査した結果を用いて,海底地形をリアルタイムで地理情報システム(GIS)上に表示するための開発を行なった.さらに,音響を用いて広域に藻場を推定することができるサイドスキャンソナーを使用し,岩手県山田湾のスゲアマモ場を対象に調査を行ない,GIS上に取り込むための実験を行なった.また,東京大学海洋研究所研究船白鳳丸を用いて東シナ海におけるマイクロネクトンや大型動物プランクトンの分布について計量魚群探知機により調査するとともに,各種ネットによる生物種の確認を行なったが,本年度に導入した新しい計量魚群探知機のソフト上のトラブルのため,データ解析は終了していない.これらの結果について得られた成果を,水産海洋学会および水産学会において公表した.
|