研究概要 |
本研究では、日本近海の環境試料中の内分泌かく乱物質の測定を行い(Kannan et al., Environmental Science and Technology 2000;Isobe et al., Environmental Science and Technology 2001)次に、内分泌かく乱物質による水産資源への影響解析を行うため魚類の調査を行った。(橋本伸哉,恒星社厚生閣2000年;久保田仁志ら,日本水産学会誌2001年;飯島憲章ら,日本環境毒性学会誌2001年;Sulistiono et al., Fisheries Science in press ; Cho et al., Histological abnormalities in the gonads of konoshiro gizzard shad(Konosirus punctatus)from coastal areas of Japan,投稿中)さらに、分取キャピラリーガスクロマトグラフとバイオアッセイ(MCF-7)を用いる生化学的試験方法とを有機的に融合させ、内分泌かく乱物質の異性体別雌性ホルモン様活性の分析化学的生物検定法を確立した。(Hashimoto et al., An automated enantiomeric isolation system using gas chromatograph-preparative fraction collector for the individual analysis of estrogenic potency in chiral compounds,投稿中) 研究の結果、以下のことが判った。 東京湾底泥コア中の内分泌かく乱物質の測定を年代ごとに行い、東京湾では1970年代以前から雌性ホルモン様活性物質が湾内に流入していたことがわかった。また、マコガレイへの雌性ホルモン様活性物質による影響をこれまでに調査してきたが(平成10-11年度 科研費 基盤研究C2 代表 橋本伸哉)、本研究では東京湾に生息するコノシロを新たに調査した。その結果、オスのマコガレイに見られた精巣卵よりもさらに進んだ精巣卵が見られ、この現象が特定の魚種にのみ見られる現象ではないことを明らかにした。さらに、本研究で開発した「異性体別内分泌かく乱物質自動分取装置」は、内分泌かく乱物質の異性体別雌性ホルモン様活性の研究に大変有効であることが判った。本研究によって、わずかな構造上の違いを有する物性が類似した化学物質グループを三次元的危険性評価空間上にプロットすることが可能となった。 メダカに、女性ホルモンを与え精巣卵の発現を調べた結果、低温ではより低濃度の女性ホルモンにより精巣卵が発現することがわかった。今後、雌性ホルモン様活性物質の魚類に対する影響における水温の関与について、さらに研究を進める予定である。(Miranda et al., General and Comparative endocrinology, in press)
|