平成12年度および13年度は、漁具や漁船位置をモニターするための低軌道通信衛星(LEO : Low Earth Orbit)を利用するオーブコムデータ通信端末とGPS受信機を内蔵した小型漂流型ブイを使って、その基本性能試験や国内固定点あるいは海上、船上でのデータ通信能力とGPS測位精度の調査を実施した。その結果、モニターシステムとしての基本的な利用性において問題はない事が確認できた。ただし、位置精度に関しては、海流観測用漂流ブイとして必要な精度は有しているが、漁具間距離などの精密さが要求される場面で満足できる精度ではないことがわかった。 平成14年度は、広域通信を対象としたモニターシステムの総合検証実験を行った。グローバルグラム衛星通信方式を使用してのデータ通信のリアルタイム性の確認や、前年度の結果を踏まえて、測位精度改善のために新たにブイに付加装備した小型GPSの精度評価を行った。モニター局は東京水産大学に設置し、ブイからのGPS位置データ等は衛星や地球局を介してインターネットでモニターできるようにした。ブイは、オセアニア、インド洋、南極海などを遠洋航海する本学研究練習船(神鷹丸、海鷹丸)に設置し連続モニタリングを行った。ブイからデータを発信してモニター局に届くまでの所要時間は、概ね10分以内であるが、船舶の構造物等の影響で通信の確立が阻害された場合などには、数時間の遅延が生じる事があった。衛星軌道傾斜角の関係から極域において通信成功率の低下が見られた。付加GPSの単独測位精度は、2DRMS(95%確率誤差円半径)で43mの高い精度を示した。今回の研究から、通信衛星を利用した遠隔モニターシステムの実用性が確認できたので、この成果を元にシステムの漁業分野への応用へと今後研究を展開していきたい。
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