研究概要 |
1.アユの細菌性出血性腹水病の原因菌Pseudomonas plecoglossicidaを特異的に溶菌する2種類のファージ(Myoviridae,Podoviridae)をアユ病魚および養殖池水から分離した。全国各地から収集した菌株はすべていずれのファージに対しても感受性を示したことから、本菌のファージ型は1つと判断された。菌を経口感染させたアユにファージを混合した餌を与えた結果、ファージ投与区は対照区に比べて有意に死亡率が低下した。ファージ投与区では体内での菌数が激減し逆にファージ数が急増したことから、この死亡率の低下はファージがアユ体内で菌を溶菌したことによってもたらされたと結論された。また興味あることに、出現したファージ耐性株にはアユに対する病原性が認められなかった。なお、菌株収集の過程で、従来のものとは異なり色素産生能を有する株が分離された。 2.マガキ幼生のビブリオ病原因菌Vibrio splendidus biovar IIに対する11株のファージ(Podoviridae)を種苗生産環境から分離した。ファージ型別試験の結果、本菌のファージ型は多型と考えられた。V.splendidusで実験感染させたマガキ幼生にファージを投与した結果、ファージ投与区に顕著な防御効果が認められた。 3.アユの冷水病原因菌Flavobacterium psychrophilumに対するファージをアユ養殖環境から分離した。ファージ型別試験の結果、本菌のファージ型は多型と考えられた。 4.ブリ連鎖球菌症の原因菌Lactococcus garviaeのファージ感受性株と耐性株についてそれらの構造(電顕観察)および菌体成分(外膜)の比較を行ったが、ファージ・レセプターに関する情報は得られなかった。
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