1.アユの細菌性出血性腹水病の原因菌Pseudomonas plecoglossicidaを特異的に溶菌するファージを自然界から分離した。本菌のファージ型は1種類と判断された。菌を経口感染させたアユにファージを混合した餌を与えた結果、ファージ投与区の魚の死亡率は対照区に比べて有意に低かった。自然感染を想定して、実験感染病魚からの排出菌による感染に対するP.plecoglossicidaファージの経口投与の効果をみたところ、ファージ投与区の死亡率は対照区に比べて著しく低かった。これらの室内試験の結果を踏まえて、本病が発生しているアユ養殖池での治療試験を行ったところ、混合ファージの経口投与後3日目から死亡魚数が減少し始め、2週間後にはファージ投与前の死亡量の約3分の1にまで低下した。 2.Lactococcus garviae(ブリ連鎖球菌症原因細菌)のファージを用いて、人為感染魚に対するその感染防除効果をみた結果、ファージ投与魚の死亡率は対照魚に比べて有意に低かった。L.garviae菌の強毒株および弱毒株を用いて、ファージ感受性と菌体表面の構造(繊毛、莢膜)との関係について検討した結果、強毒株と弱毒株ではファージに対する感受性に違いが認められた。しかしファージに対するレセプターを特定することはできなかった。 3.マガキ幼生のビブリオ病の原因菌、Vibrio splendidus biovar IIに対するファージを自然界から分離した。人為感染させたマガキ幼生にファージを投与した結果、ファージ投与区の死亡率は対照区に比べて有意に低かった。自然感染に対するファージの感染防御効果をみたところ、ファージ添加区で死亡率が低下しファージの添加効果が認められた。 以上の結果から、水産分野において、養殖魚介類の細菌感染症に対するファージ療法は将来非常に有望であると結論される。
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