昨年度の研究から、コチ属2種に関する成果を結論付けるためにネックとなる2つの問題が今年度に残った。一つは、成長度を評価するために確認が必要な年齢標示形成時期が年齢によって変わらないのかという点、他の1つは、稚魚の分布から、有明海東岸に流入する河川の河口が幼期の成育場所としての役割を持つことが分かったが、有明海の北岸(奥部)に流入する多くの河川が同じ機能を有しているか否か、という点であった。 両種の成長度については、昨年度、充分な標本が得られなかった若齢個体を中心に標本の収集に努力し、年齢別に耳石の標示形成周期を検討した。その結果、若齢期に、高齢期と同じ季節に標示が形成されることを確認した。年齢標示は、冬季の低温または成熟に伴うエネルギーのシフトにより魚体にストレスが生じるためと考えられているが、コチ属魚類についてはその他のストレスが働いて標示が形成されることが分かった。年齢・成長については、この成果を踏まえて論文にまとめ、現在、投稿中である。 稚魚の成育については、4月から10月に、昨年度調査を行った海域とは環境が異なる佐賀県六角川の河口で漁船を傭船して稚魚類の出現状況を調査した。その結果、20科37種の魚類が採集され、その多くが稚魚であったが、コチ類の稚魚は全く出現しなかった。したがって、マゴチの成育は有明海東岸に流入する河川の河口で行われること、すなわち、マゴチ稚魚は砂質底が発達する河口域で成育することが結論できた。この成果は近く論文に取りまとめ、発表の予定である。ヨシノゴチの幼期における生態については依然不明である。
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