重要水産資源生物であるズワイガニの資源量は減少の一途を辿っているため、資源管理が行われている。その管理のためには親ガニのみならず、幼生の管理・調査も必要である。しかし、本幼生はベニズワイ幼生と酷似するため、これらの識別は非常に困難である。本研究では、特異抗体を用いた免疫学的手法を用いて、両者を識別することを目的として研究を行ない、以下の結果を得た。 1)マウスをズワイガニ幼生で免疫することにより、本幼生を特異的に識別するポリクロナル抗体を作製した。この抗体を用いて、本幼生を特異的に識別する免疫組織染色法の諸条件を検討した。その結果、4%ブロックエースを用いた幼生表面のプロッキング処理、0.05%Tween20を添加した洗浄液による幼生の洗浄、そして0.32‰NiCl_2を添加したDAB発色液を用いることにより、ズワイ幼生とベニズワイ幼生を区別することを可能にした。 2)ポリクローナル抗体よりも品質の安定したモノクローナル抗体を作製するために、本幼生を免疫原としてマウスの皮下に投与し、十分に免疫した後、その脾臓細胞とミエローマを融合させることによりハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマの生産するモノクローナル抗体はズワイガニ幼生にのみ反応を示したが、ベニズワイガニの幼生には反応しなかった。したがって、作製したモノクローナル抗体を用いた免疫組織染色法は、ズワイガニ幼生の資源量の把握・推定に大きく貢献する可応性の高いことが考えられた。
|