研究概要 |
1.魚類腸内細菌叢の構成および定着に関して研究を行い、以下の結果を得た。 2.ティラピア(Oreochromis mossambicus)およびソウギョ(Ctenopharyngodon idella)各5尾の腸管内容物から好気性および嫌気性細菌を分離し、16S rDNA塩基配列を決定し、分子系統分類学的検討を行った。その結果、両魚種とも好気性細菌はAeromonas veronii,Citrobacter freundii,Plesiomonas shigelloidesなどを含むクラスターに分類された。また嫌気性細菌は主にFusobacteriaおよびCFB groupに分類された。 3.ヒラメ(Paralichthys olivaceus)およびマダイ(Pagrus major)についても同様に16S rDNA塩基配列に基づいて腸内細菌を検索した結果、Vibrio fischeri,Vibrio scophthalmiおよびVibrio carchiariaeに近縁のクラスターに分類された。また何れの魚種・個体からも嫌気性細菌は分離できなかった。 4.腸内細菌の粘液付着性を測定するためのアッセィ系の確立を検討し、テトラゾリウム塩を用いることによって容易に腸内細菌の粘液付着性を定量化することができることを見いだした。 5.コイ(Cyprinus carpio)腸内細菌の粘液に対する付着性を検討した結果、優占菌であるAeromonas属細菌は他の細菌種に比較して高い付着性を示した。この結果は魚類腸管内において細菌が定着するためには粘液付着性が重要な因子になる可能性が高いことを強く示唆するものである。
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