二酸化炭素気相下におけるボツリヌス菌胞子の発芽生理に関する研究のなかで、今年度は特に以下の点を解明した。 ボツリヌスE型菌胞子(Iwanai株)を低温(5℃以下)、高濃度二酸化炭素気相下に置くと、徐々にではあるが死滅する現象の詳細を解明した。0℃下で培養した胞子を位相差顕微鏡により直接観察した結果、CO_240%では5日後(低温死滅が確認される)の時点でほとんど全ての胞子が暗黒化を示したが、N_2100%及び含気区(生菌数が変化していない)ではほとんどが輝度を有した状態を保持していた。またCO_240%では、5日後の時点で暗黒化は確認されたが、伸長は20日後においても確認されなかった。このことから、CO_2により胞子発芽の初期現象が引き起こされたが、その後伸長することなく温度やCO_2やpHなどの影響により死滅が起きたという作用機作が推定された。また、胞子の死滅現象が、培地の違い(すなわち、化学的環境の違い)、菌株の違い(生物学的普遍性)、胞子形成条件の違いにより普遍的に認められるか否かを検討結果、低温(5℃以下)且つ高濃度二酸化炭素気相下における死滅現象は、培地の種類による差違、菌株による差違、胞子の前処理による差違にかかわらず認められることを明らかとした。 以上の成果は平成12年度当初の計画をほぼ達成したと考えている。
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