昨年度研究で、ボツリヌスE型菌胞子を低温(5℃以下)且つ高濃度二酸化炭素気相下に置くと徐々に死滅することを見い出し、その作用機構として発芽初期現象が密接に関与していることを明らかにした。本年度は、二酸化炭素と低温によるボツリヌス初期発芽生理に及ぼす影響についてE型菌以外についても検討した。ボツリヌスB型菌(Karashi株他2株)について、超音波処理、酵素処理により栄養細胞を除去した胞子液を調製後、寒天培地に塗沫し、低温・二酸化炭素気相下で位相差顕微鏡により光屈折性を喪失した発芽過程の胞子数を計測した。その結果、胞子発芽初期現象と低温・二酸化炭素気相の関係が経時的に詳細に明らかとなり、また、光屈折性を喪失や耐熱性の消失が菌株の違いにかかわらず普遍的に認められることを明らかとした。 また、二酸化炭素とボツリヌス胞子の発芽・増殖・毒化までの過程に及ぼす影響を総合的に解明するために、鮮魚包装におけるボツリヌスE型菌および加熱生残したボツリヌスA型菌胞子が二酸化炭素気相包装食品においてどのような挙動をとるかについても検討した。ボツリヌスE型菌およびA型菌の胞子発芽から増殖・毒化までに及ぼす二酸化炭素の影響を、それぞれ、鮮魚包装、加熱米飯包装において検討した。含気、100%N_2、65%N_2と35%CO_2の混合気体の3種類の気相条件で包装したハマチ魚肉サンプルを4℃、8℃、16℃貯蔵した結果、本菌の胞子発芽とその後の増殖は16℃および8℃で確認され、両温度における全てのサンプルが貯蔵期間中に毒化を示したが、4℃では全ての気相条件において毒化が認められなかった。また、無菌米飯におけるリスクは、ボツリヌスA型菌のみの汚染の場合、食中毒の危険性は極めて低いこと、A型菌とバチルスの混合汚染の場合、二酸化炭素含量に関わらず、酸素0%の系で毒素検出がサンプルの腐敗よりも早く生じ、食中毒の危険性が極めて高いことがあきらかとなった。 以上の成果は平成12年度当初の計画をほぼ達成したと考えている。
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