研究概要 |
本研究では、組換えDNA技術を用いて、魚類のSOD遣伝子並びにその5'-フランキング領域をクローニングしてその一次構造を決定し、分子レベルでのSODの構造・機能並びにプロモーター領域を明らかにすること、更には、DNAプローブや本酵素を認識する特異抗体を利用することにより、魚類の酸化ストレス応答を明らかにすることを目的とした。先ず、ヒラメの人為的細菌感染系を用い、魚病の病態発現におけるSOD活性の挙動を調べた。数種の魚病細菌の中ではヒラメの代表的細菌感染症であるEdwardsiella tarda (E.tarda)感染群で感染初期に肝膵臓のCu,Zn-SOD活性の急激な変化が確認された。そこでCu,Zn-SOD及びMn-SODの応答を遺伝子、タンパクレベルで調べる為に、ヒラメ肝膵臓より両SODを単離精製し、その酵素学的諸性質を明らかにした。次いで精製酵素のN末端アミノ酸配列の情報に基づいてデザインしたプライマーを用いて、RT-PCR、RACE法により両SOD遺伝子のクローニングを行い、全一次構造を明らかにした。更に、GST-融合タンパク質発現系による両SOD遺伝子の大腸菌による高発現系の構築を行い、ヒラメCu,Zn-SODについては発現に成功した。また、再びヒラメにE.tardaを感染させ、その感染系を用いて病態の進行に伴うSODの挙動の変化を酵素活性及び特異抗体を用いたイムノブロット法による酵素量を指標として調べた。その結果、Mn-SODについては菌接種後1時間、3時間後において酵素活性及び酵素量の上昇が確認され、本酵素のE.tarda感染に伴う酵素的防御能の可能性が示唆された。今後は、これらの情報に基づいて酸化ストレス応答に伴う両SOD遺伝子の発現調節機構を解明していく予定である。
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