イカ筋にしか見出されていない中性領域に活性を持つ金属プロテアーゼが存在している。この中性金属プロテアーゼはミオシンに高い特異性を示すもので、筋肉タンパク質の代謝に関係する酵素と考えられた。しかしスルメイカ等のツツイカ目イカ類筋肉に活性が認められるが、コウイカ目類の筋肉に活性は認められなかった。さらに、ミオシン量の極めて少ない肝臓に活性が高いことから筋タンパク質代謝以外の機能をもつものと推測された。この酵素にはミオシンの分解部位の異なる、三種のアイソフォームが存在していた。この新奇のプロテアーゼの機能を解明するためにPCR法により、全塩基配列の決定を試みた。その配列をもとにアミノ酸配列を推定したところ、スルメイカとヤリイカとではアイソフォームの存在の仕方が異なっていることがわかった。いずれのアイソフォームもプロドメインを持つ前駆体構造をとり、シグナルペプチドを持つ分泌性のプロテアーゼであることが明らかとなった。また塩基配列より、アスタシンファミリーに属することも明らかに出来た。アスタシンファミリーに属するプロテアーゼは消化酵素として、また成長因子の調節や発生に関わる物などが存在している。プロテアーゼドメィンの系統樹を調べたところ、イカのプロテアーゼは従来知られているいずれのアスタシンファミリーのクラスタに属していないこともわかった。以前このイカの新奇プロテアーゼをミオシナーゼと名付けていたがastacin-like squid metalloproteaseと変更した。
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