研究概要 |
赤潮殺藻物質産生クラゲ種の探索 鉢クラゲ9種,立方クラゲ1種、ヒドロクラゲ2種および櫛クラゲ1種の計13種それぞれの個体の自己溶解液を無菌的に得て、それぞれを3〜5%濃度(v/v)で培養中の赤潮藻類Heterosigma akashiwoに添加したところ実験に用いたすべてのクラゲ類が殺藻性生理活性物質を産生することが分かった。特に、アンドンクラゲ、アカクラゲ、ユウレイクラゲなどは強い殺藻性を示した。 有害・有毒藻類に対する殺藻性の検討 上記のクラゲ類の殺藻物質が、有毒プランクトンの代表的な藻類であるAlexandrium catenellaに対しても同様に殺藻効果を持つものかについて検討したところ、強い増殖抑制効果を持ち,かつシスト化を促す効果をも有することが明らかとなった。 殺藻物質の分離・同定 ミズクラゲ自己溶解液から殺藻物質を単離しこれをLC-MSにより構造解析した結果、m/z=301(M-1)、m/z=257(M-45,M-COOH)、m/z=203のフラグメントを呈しcis-5,8,11,14,17-icosapentanoic acid(IPA)と推測され、標準IPAとマススペクトルを比較したところ完全に一致した。他のクラゲ類の殺藻物質の同定には至らなかったが、各成分のクロマト的挙動から推測して次のような物質を分離した。ユウレイクラゲからは高度不飽和脂肪酸(IPA-L-HUFA)と推測される1種類の、カブトクラゲからはIPA-L-HUFAと低極性の脂肪酸と推測される2種類の物質を分離した。アンドンクラゲは他のクラゲとは顕著に異なる分布を示し、IPA-L-HUFAに比べ高い極性をもつ脂肪酸、およびより極性の低い脂肪酸以外の物質と推測される複数の成分が存在することが分かった。
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