研究概要 |
1.鶏卵消費によるサルモネラ食中毒のリスク回避に対する消費者の支払意志額を「競り実験」の手法を用いて推定した.実験に供した鶏卵はスーパーで通常販売しているM玉パックとサルモネラ対策済み鶏卵パック,実験参加者は千葉県下の小・中学生保護者35名である.その結果,参加者はサルモネラ・フリー鶏卵に通常購入している鶏卵価格の倍額を支払う意志を示し,さらにサルモネラ症に関する情報が付け値を上げることも明らかされた. 2.普通牛乳を対象として,加工段階の食品安全性情報としてのHACCP表示と生産段階の環境負荷情報を示すエコラベル表示が消費者の購買行動に与える影響を,選択型コンジョイント分析により検討した.札幌市選挙人名簿から無作為抽出したサンプルへのアンケートにより収集したデータを分析した結果,HACCPおよびエコラベル表示がない普通牛乳(150円/1リットル紙パック)を基準とすると,消費者はHACCP表示,エコラベル表示のある牛乳にそれぞれ10〜20円高い金額を支払う意志があることが明らかにされた. 3.大分県安心院町で実施した,牛肉の原産地・安全性・価格に関する複数の組み合わせの間で選好順位を付けてもらうアンケートの回答データに,ランク・ロジットモデルを適用し,地場畜産物である安心院牛に対する消費者ニーズを中心に,消費者の選好構造を分析した.その結果,安心院牛は,国産牛と比べ高く評価されており,その評価は町内在住者の方が町外在住者より高いが,地場畜産物の安全性についてはあまり期待されていないことが明らかにされた. 4.以上のように今年度は,小規模標本による事例分析に基づいて,消費者質問調査の適切な設計法および様々な表明選好分析手法の適用可能性を検討した.来年度はこれらの成果を踏まえ,全国規模の消費者調査を実施し,わが国消費者の食品安全性に対する選好の構造を実証的に明らかにする予定である.
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