研究概要 |
1.昨年度に引き続き,普通牛乳を対象として,加工段階の食品安全性情報としてのHACCP表示と生産段階の環境負荷情報を示すエコラベル表示が消費者の購買行動に与える影響を,選択型コンジョイント分析により検討した.今年度は,帯広市においてアンケート調査を実施し,それらの回答データに基づいて分析した結果,消費者はHACCP表示,エコラベル表示のある牛乳にHACCPおよびエコラベル表示がない普通牛乳に比べ,約2〜3割高い金額を支払う意志があることが明らかにされ,帯広市民は牛乳の安全性だけでなく,環境保全型酪農への誘導を促すグリーン購入志向も有することが確証された. 2.牛肉へのトレーサビリティ導入に対する消費者のコスト負担意思額を仮想状況評価法(CVM)により明らかにした.全国の量販店,専門店,焼肉店計14店舗への来店客約1,500名を対象とした支払カード方式によるCV調査から収集した回答データに基づき,トレーサビリティが保証されている店舗で従来の牛肉購買価格に比べ,いくらまでの価格上昇率なら許容する用意があるかグループド・データ回帰モデルで推計したところ,許容価格上昇率は平均値で約7%,中位値で約6%であること,そして,牛肉購買時に産地(価格)への関心が高い消費者ほど許容価格上昇率が大きい(小さい)こと,トレーサビリテイ導入により安心して牛肉が購入できると期待している消費者ほど許容価格上昇率が高いことが明らかにされた. 3.農産物の生産方法と,食品安全性を確保する手段としてのトレーサビリティに対する消費者評価を,選択型コンジョイント分析により生産野菜(ミニトマト)について定量的に分析した.茨城県土浦市において実施したアンケート調査の回答データを分析に供した結果,地元農産物志向が存在すること,有機栽培と無農薬・無化学肥料栽培の相違がよく理解されていないこと,トレーサビリティに対する消費者評価は,「有機」や「無農薬・無化学肥料」の4割弱,「減農薬・減化学肥料」の6割弱程度であることが明らかとなった.
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