フードシステムの研究の中でも、消費者の食品の需要に関する研究は比較的蓄積が多い分野であるが、従来はデータの制約もあって、カテゴリーのレベルでの需要分析が多く、ブランドレベルでの需要分析はほとんど行われてこなかった。近年、POSデータの利用により、ブランドレベルでの需要分析も活発に行われるようになった。しかし、それでも食品のブランド相互間での消費者の評価の違いや、そのことが需要に及ぼす影響についてはまだ十分に解明が進んでいるとは言えない状況である。 本研究では、味覚の官能試験を取り入れることにより、消費者が食品を評価する場合に、どのような属性を評価しているのかを検討し、従来よりも詳細な分析を可能にすることをねらいとしている。 官能試験(官能検査)とは、「人間を一種の計測機械と考え、この人間の感覚を用いて、物や人間のさまざまな特性を一定の手法にのっとって評価、測定あるいは検査する方法」(日本フードスペシャリスト協会編『食品の感応評価・鑑別演習』建帛社、p1)である。本研究では人間の感覚である特性を測定することよりは、人間がその特性をどの程度に評価しているのかを明らかにする方に重点を置いている。条件を設定した中で、味覚による評価無しに食品についての評価を答えてもらい、それを味覚による評価を伴った形で答えてもらった評価と比較するなどの方法によって、消費者が食品を評価する場合に、味覚がどのような関わりを持ってくるのか、あるいは味覚以外の属性がどのような関わりを持ってくるのかを検討した。また、味覚の評価に当たっては、コンジョイント分析など、近年のフードシステム研究で使われ始めた研究手法も組み合わせて、分析を試みた。 更に関連分野であるマーケティング論への応用も試み、特に、今までの知識や経験、情報などが無い状態から市場参入を図らなければならない新商品開発の場合への適用を試みた。
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