平成12年度から14年度にかけて、「日・韓・台農業におけるR&D及び環境要因が生産性に及ぼす影響の実証的研究」という研究課題の下に日・韓・台農業の生産性に関する実証分析を行って来た。日本農業のデータベース(DB)の作成及びup-to-dateに意外に時間がかかり、韓・台農業のDBはまだ未完成なところがあり、十分な実証分析ができない。しかし、日本農業のDBはかなり優れたものを作成することができたので、まずはこの日本のDBの基づいた実証分析に集中した。それらは、大きく分けて3つの方向でなされた。まず第一に、日本農業における生産性に対してR&Dおよび普及活動(R&E)がいかなるインパクトを及ぼしてきたか、さらに、それらの活動は技術進歩のバイアスになんらかの影響を及ぼしたのではないかという視点からの実証分析である。次に、R&Eによる農業生産性へのインパクトと生産調整政策の農業生産性へのインパクトを検証できるモデルを導入し、その実証分析をおこなった。さらに、これまでは、農業における資本投資が生産性にインパクトを与えているだろうことは直感的に分かるし、この因果関係の方向での研究が多かった。ここでは、より視点を拡張して、資本投資が生産性にインパクトを与えるという方向と、逆に、生産性が資本投資にインパクトを与えるという方向も当然考えられるので、両方向の因果関係を検証しておく必要が出て来る。時系列分析の手法を用いてその検証をおこなった。それぞれを独立した論文にまで仕上げており、かなり高い完成度を持っている。しかし、当初の目的の一つであった、環境要因のインパクトの検証は、残念ながら芳しい結果を得るに至っておらず、今後もこれらのよりよい変数の作成・加工に工夫をこらす必要がある。同じことは、韓国及び台湾の実証分析についても言える。いずれの国においても、R&Eや環境要因のデータを得ることは極めて困難かつ時間を要する。しかし、非常に挑戦的な課題であるので、今後ともこの実証研究は継続するつもりである。
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