本研究は、日本農業の条件不利地域である中山間地域における集落構造の現状とそれに対する新たな政策上の課題を明らかにすることを目的としている。統計分析や実態調査分析により得られた結論は以下の通りである。 1.中山間地域では、過疎化や農地の潰廃の延長上に、集落機能の脆弱化という問題が発生している。本研究による独自の統計分析によれば、地域資源管理を中心とする集落諸機能の現状は、集落の農家戸数規模や集落内農家の高齢化との関係が強く確認される。つまり、小規模で高齢化が進んだ集落でその機能低下が著しいのである。 2.そして、特に西日本を中心として、集落機能が脆弱化した集落の中には、集落の寄合すら開催できない「限界集落」が形成されはじめている。そして、そうした集落は、地理的にはまとまっており、その周辺部には準限界集落が生じていることも山口県の集落GIS分析を通じて明らかになった。 3.そのような中山間地域の集落に対する政策的対応は、今までの中山間地域政策を振り返ってみると、十分ではなかったが、新たな食料・農業・農村基本法が制定され、それを契機に、中山間地域への直接支払い制度が実施され、その成果が期待される。 4.この制度は画期的なものではあるが、いくつかの間題点も存在している。特に、限界集落ではこの制度を活用することができず、中山間地域内部における新しい地域間格差が生じている。そのため、中山間地域政策は、直接支払い政策に加えて、総合的な対策が必要とされている。
|