本研究は市場経済化した中国における農業と農業政策の将来展開の理解に資するため、ミクロレベルでの農家経済に焦点を当て、その生産・生活の現状並びに経営・消費行動の様式と原理を実証的に分析することを課題としている。 本年度は、第1に、東部と西部から代表的な地域を選び、農家の生産、販売活動(作付け決定、労働・資本投入、食糧販売と流通過程の組織化など)を取り巻く環境条件や農家の行動様式について現状調査を行い、その経済分析を行った。第2に、農村住戸経済調査データに基づき、農家の一般家計及び食料の消費行動について計量経済学的に分析した。そして第3に近年農家経済が低迷し、都市住民との所得格差が拡大しつつあることに着目し、中国国内によく議論されている農民負担問題について、その現状、農民負担問題が生じた歴史的、制度・政策的な要因並びに農民負担問題を根本から解決するため、目下中国政府が推進している農村「費改税」改革でもまだまだ不十分であり、時代遅れの現状の農村税収制度を廃止し、税収、財政投資の両面において農民に国民待遇を与えるよう、国家財政制度を全面的に見直さなければならないことなどを明らかにした。
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