貿易諸制度を含む国際貿易空間均衡モデルの展開と国際農畜産物市場分析へのその応用

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12660203
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 川口 雅正 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (00003129)
• キーワード: 国際貿易空間均衡モデル / 国際農畜産物市場 / 市場分析 / 流通経路 / リスク / 計量分析

研究概要

今年度は開発途上国の乳製品市場と酪農の発展方向に関する補足的分析を行い、Chu・川口(2002、第1論文)及びQuach and Kawaguchi(2003、第5論文)として公表した。なお本報告の別掲の研究発表雑誌論文の上から第i番目の論文を簡単のため「第i論文」と略記する(i=1、2、.、7)。また開発途上国の米市場と稲作の発展方向に関する補足的分析を行い、Nguyen and Kawaguchi(2002、第2論文、第3論文、第4論文)として公表した。
これらの国際乳製品市場及び国際米市場に関する補足的分析に基づいて、またこれまでに本研究で開発した国際貿易空間均衡モデルとその均衡解を得るためのパソコン・ソフトウェアに基づいて、今年度は主に国際穀物市場の分析に取り組んだ。その研究の中で、穀物市場は収量の気候変動やそれに伴う価格変動が大きく、リスクを考慮した新たな均衡概念を導入する必要があり、かつ流通経路が複雑で従来の単純化された流通ルート(基本的には「生産者」-「消費者」)に対して、より具体的な流通ルート(例えば「生産者」-「営利的な流通業者」-「消費者」)を考慮し得るモデルの展開が必要であるとの結論に達した。
このような観点から従来の空間均衡モデルの展開方向に関する分析を行い、川口(2003、第6論文)として公表した。また本研究で開発したこれまでの国際貿易空間均衡モデルを、上述のようなより具体的な流通ルートを考慮し得るよう一般化し、その結果を川口(2003、第7論文)として公表した。リスクを考慮した新たな均衡概念に基づく国際貿易空間均衡モデルの展開も基本的には既に完了し、その成果を平成15年4月鹿児島大学で開催されるTEA研究会で発表予定である。

研究成果

• [文献書誌] Chu, Thi Kim Loan, 川口雅正: "ベトナムおよびタイにおける酪農の発展方向に関する比較研究"石田修・他編「国際経済のグローバル化と多様化2-アジア経済とグローバル化-」九州大学出版会. 単行本. 141-172 (2002)
• [文献書誌] Nguyen, Thi Minh Hien, Tsunemasa Kawaguchi: "Comparative Study of the Rice Production Systems in Northern Vietnam"Journal of the Faculty of Agriculture Kyushu University. 46巻2号. 481-499 (2002)
• [文献書誌] Nguyen, Thi Minh Hien, Tusnemasa Kawaguchi: "On the Basic Features of Farming System in the Mekong Delta-Vietnam"Journal of the Faculty of Agriculture Kyusyu University. 47巻1号. 195-204 (2002)
• [文献書誌] Nguyen, Thi Minh Hien, Tusnemasa Kawaguchi: "Overview of Rice Production System in the Mekong Delta-Vietnam"Journal of the Faculty of Agriculture Kyusyu University. 47巻1号. 221-231 (2002)
• [文献書誌] Quach, Thi Xuan, Tsunemasa Kawaguchi: "A Study on the Limiting Factors of Dairy Production Development in Hanoi Vietnam"Journal of the Faculty of Agriculture Kyusyu University. 47巻2号(In press). (2003)
• [文献書誌] 川口雅正: "空間均衡モデルの近年の展開方向について"九州大学大学院農学研究院学芸雑誌. 57巻2号(印刷中). (2003)
• [文献書誌] 川口雅正: "営利的流通業者による国際貿易の関税を導入した空間均衡モデルの展開"九州大学大学院農学研究院学芸雑誌. 57巻2号(印刷中). (2003)