研究概要 |
今年度は、従来の単純化された流通ルート(基本的には「生産者」-「消費者」)に対して、より具体的な流通ルート(たとえば「生産者」-「営利的流通業者」-「消費者」)を考慮し得る国際貿易空間均衡モデルの展開および農業生産の不安定性に起因するリスクを均衡条件の中で考慮し得る国際貿易空間均衡モデルの展開の必要性を、従来の空間均衡モデルの展開方向に関する分析に基づいて明らかにし、川口(2003a)として公表した。なお別掲の研究発表雑誌論文で発行年が同じ場合上から順にa、b、c、..の記号を発行年の後に付けて区別する。 次に上述のようなより具体的な流通ルートを考慮し得るようにこれまでの国際貿易空間均衡モデルを一般化し、川口(2003b)として公表した。またリスクを考慮した新たな均衡概念に基づく国際貿易空間均衡モデルを展開し平成15年4月鹿児島大学で開催されたTEA研究会で国際小麦市場を事例とした事例分析の結果を報告し、新たな均衡概念に基づく分析が可能であることを明らかにした(川口雅正「空間均衡モデルへのリスクの導入と備蓄制度分析へのその応用」2003年度TEA春季大会配布資料)。 その後日本とメキシコの間のFTA交渉に関連して、豚肉の差額関税制度の分析が課題とされるようになったことから、本年度の研究実施計画の残りの部分(パソコンソフトウエアの再構築および国際市場への環境問題の影響の分析)を急遽次年度以降の今後の課題へと変更し、国際貿易空間均衡モデルへの差額関税制度の導入に関する研究を行い、モデルの理論的展開および均衡解の求め方に関する研究成果を、狩野・川口(2004a,b,c)として公表し、国際貿易空間均衡モデルへの差額関税制度の導入が実際に可能であることを明らかにした。 狩野・川口(2004a,b,c)のモデルをさらに非線形の需要・供給関数も利用し得るよう一般化したモデルを利用して、わが国の豚肉市場への輸入制度変更の影響の実証分析を行い興味深い分析結果を得ており、この分析結果は近日中に公表予定である(Bergen, M.and T.Kawaguchi 2004 Introducing a spatial equilibrium model under consideration of a realistic differential tariff system to the Japanese pork import market-Reflecting upon the impact of the gate-price under perfect competition-. J.Fac.Agr., Kyushu Univ.,49(2)として2004年10月に公表予定)。
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