本年度は農協の広域合併と市町村合併を視野に入れた地域の取り組みを調査した。まず宮城県仙南加工連は昭和42年から7市町村農協が連携して策定した「営農団地構想」の食肉加工・販売部門の実践部隊として設立された。ここでは宮城生協との産直による安全な食肉・加工品を供給することを媒介に、養豚経営の規模拡大と経営安定のための高付加価値化を実現している実態が明らかになった。大分県日田地区では大山農協が取り組む農産物直売施設と、前津江・中津江・下津江の三村と大分日田農協が出資し、農産加工を担う第三セクター「つえエーピー」とが、日田地域の広域合併をにらみつつ、相互に農産物を供給し合いながら、中山間地域農業の活性化と構造変革に取り組んでいる実態が明らかになった。さらに「道の駅」を利用した地域農産物の直売政策を推進している山口県では、県内14カ所の道の駅からなる「山口県交流拠点施設連絡会」を平成8年に設立し、地域農林産物の相互委託販売と情報交換を行いながら、各市町村の農林産物の一層の掘り起こしと販売戦略の展開を支援している実態が明らかになった。佐賀県三養基農協管内では、認定農業者の施設園芸への比重の増大を背景に、市町村をこえた農地流動化や、集落営農の連携の必要性が高まっていることが明らかになった。そして長野県須坂農業改良普及センター管内では、リンゴ等の果樹作の担い手の高齢化を背景に、市町村をこえた担い手農家間さらには非農家の労働力も視野に入れた労働力交換が取り組まれている実態が明らかになった。以上、いずれも地域農業の課題解決の手段として、市町村をこえた広域的な連携の必要性を示すものである。
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