研究概要 |
本年度は研究の最終年度にあたるため,これまでの理論的な成果を集大成するとともに,実践的なケースの開発とその活用・評価を行った。得られた成果の概要は,次のとおりである。 1)バイオビジネス教育におけるケース・メソッドの意義を,主としてトップマネジメントの意思決定メカニズムから企業経営を探るという視点に基づいて整理した。 2)次の6つのケースを開発し,その有効性を大学のゼミ教育で実証した。 (1)先進農家の成功ケース(日本一のイチゴ生産農家の技術と人的ケットワークの重要性分析) (2)農業法人の成功ケース(高生産性施設園芸経営の成功要因とリスク管理の重要性分析) (3)酒造会社の成功ケース(大分県の酒造会社・三和酒類における「いいちこ」のヒット要因の分析) (4)調味料メーカーの成功ケース(日本食研の急成長の秘密とニッチマーケティング戦略の重要性分析) (5)種苗メーカーの成功ケース(みかど育種農場における技術革新と国際化戦略の重要性分析) (6)造園メーカーの成功ケース(日比谷アメニスにおける「環境の時代」の先取りにより市場創造の分析) これらの開発したバイオビジネスケースを学生のゼミナール教育で1年間活用し,その成果を評価した。その結果,こうしたケース教育のメリットとして,(1)リアリティーの高さ,(2)全て事実なので理解しやすい,(3)実際の経営を学べる,(4)積極性の向上等について多くの学生が指摘した。一方,問題点としては,(1)成功例だけでなく失敗例はが必要,(2)討論が難しい,(3)特定の人での討論になってしまう,といった問題が指摘された。こうした評価と経験をもとに,バイオビジネスケース教育を成功するための要因を,(1)ケースの内容,(2)教師の役割,(3)討論の進め方の3つの側面から整理した。
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