本年度は3年の研究期間の初年度ということで、上記の研究課題に則してEU・フランス農業の畑作、畜産(主として酪農)部門と比較するため北海道・十勝管内の大規模畑作地帯(更別町、中札内村)と酪農地帯(鹿追町)において農村調査を実施した。現在、WTO体制という国際的枠組みが深化する過程に対応して先進資本主義各国では農政転換がほぼ共通して図られてきているが、このことが日本およびEU・フランスの農業経営構造の実態に具体的にどのように反映してきているのかを考察することが本研究の要点である。わが国の代表的畑作・畜産(酪農)地帯においても、最新の農業経営構造に関する先行研究や資料解析および農業関係諸機関や農家に対するヒアリング調査を通して、この間(1990年代)、同地域の農業経営構造が大きく変貌してきている実態が明らかになった。しかも、この農業経営構造の変化が農政転換に先行する形で進展してきた事実も同時に指摘できよう。つまり、このことはわが国のいわゆる「新農業基本法」(1999年)成立の客観的根拠ともなっていると考えられる。この点は、次年度以降に予定されているEU(とりわけフランス)における大規模畑作地帯・畜産地帯および条件不利地域の農業実態(文献研究と農村調査)を踏まえつつ、両国を比較研究することでさらに精緻化するつもりでいる。そうすることで研究課題の目的である現段階の先進資本主義各国における農業経営の経済学的性格の解明に繋がると考えるからである。
|