今年度は、フィリピン、インドネシア、タイを訪問し、米政策についての最新情報を収集した。フィリピンについては、国家食糧公社(NFA)の分割・民営化が実施されず、関税化が2005年まで先延ばしされたのに対して、インドネシアでは、食糧庁(BULOG)による米の輸入が禁止され輸入が民間部門に委ねられることとなった。また、タイにおいては、生産性は高いが低品質のJasmine Riceの新品種が配給され、Jasmine Riceの価格が急落するという事態が発生した。 このような情勢の中で、タイ、インドネシアから研究者を招聘し、彼らとの共同研究という形で、フィリピンを加えた3ヶ国における米の国際競争力の変化を、前年度収集した統計資料を利用してDRC(Domestic Resource Cost)を推計した。その結果、1)経済危機後、名目為替レートが大幅に減価したのもかかわらず、実質均衡為替レートで計ったDRCは高くなる傾向を示し、3ヶ国とも米の国際競争力は低下していること、2)DRCは、雇用労賃の上昇、米価・収量により敏感に反応することが明らかになった。 また、インドネシアにおいては、ジャワ農村における実態調査の結果から、米穀管理政策の自由化が価格や収量の不安定性を招き、それが農民の生産意欲を削減し米生産を停滞させている、という分析結果を得た。 以上の分析から、米の国際競争力が低下し国際価格も低下傾向にあるアセアン諸国において、今後とも稲作部門の発展を持続させてゆくには、生産性を向上させるような技術革新、あるいは政府による保護政策の実施、のいずれかの施策が不可欠であると結論づけることができる。
|