本調査研究対象期間は平成12年度から平成14年度に渡る3ヵ年間であり、それぞれの年次毎に九州県内に立地する園芸農産物(花きを含む)卸売市場の実態調査を実施してきた。 園芸農産物流通システムは九州圏内各県の歴史的、地勢・地形条件の違いによって異なり、青果物の流通システムに限定すれば、福岡県・長崎県・大分県・宮崎県・鹿児島県の5県は地方中核都市に中央卸売市場を開設しているが、佐賀県・熊本県は地方卸売市場体制のまま日常必需財を勤労市民に供給するというシステムになっている。しかし、時代の変化に対応できず、長崎県・宮崎県・鹿児島県の中央卸売市場は2社体制から1社体制に移行しようとしているが、合併には尚多くの障壁があるものと判断される。 また、仲卸業界の営業内容を具体的に列挙すれば、(1)他市場への転送業務、(2)大型スーパーのエージェントとしての商品取揃え・納入業務、(3)近年出現してきた契約食料サービス(CFS)企業への惣菜・調整加工業務、(4)一般小売店(八百屋)への納入業務、の4種類である。しかし、上記主要業務のうち、(1)・(2)及び(4)は奮わず、経営成果が次第に圧迫されている。殊に、宮峰市中央卸売市場に収容されている仲卸企業は業界最大手スーパーの九州総代理店として営業してきたのであるが、倒産の憂き目にあった.こうした状況の下で、青果物の卸売市場体制を支える仲卸業界の経営改善目標を最新のDEA(データ包絡線)分析法と生産関数を用いて提示する。最後に、中国大陸からの青果物輸出圧力は年次を追うにしたがって強まっており、日本農業の国際競争力を検討せざるを得ない状況になり、九州圏内の青果物卸売市場業者(荷受)も惣菜輸入という形態で開発輸入を始めている。こうした実態を科学的に分析し、その成果を書物として出版する。
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