研究概要 |
沖縄県においては,観光産業は基幹産業であり,「観光・リゾート産業の振興」が県の主要施策として展開さている。しかし近年,赤土などの流出による海域汚濁の進行が深刻な問題となっている。その原因については,近年の土地開発,とりわけ農用地の開発や利用のあり方などがいわれているが,実態は明らかにされていない。本研究は農業土地資源と観光資源・環境双方の調和のとれた開発及び利用を促進するための基礎的条件を明らかにするものである。 本年度の研究成果は,以下の通りである。 第一に,平成7年の沖縄県産業連関表を用いて,観光収入と農産物・農産加工品の輸移出収入の県経済に及ぼす影響を明らかにした。具体的には,観光収入の生産波及効果は農産物・農産加工品の輸移出収入の約4倍,観光収入の内政付加価値波及効果は約4.7倍,観光収入の波及就業者数は約2.6倍である。観光収入が農産物・農産加工品の輸移出収入の約4.4倍であり,生産波及額や波及就業者数における両者の差異は,この収入額の際ほどには大きくなっていない。むしろ収入総額で4.4倍の差がありながら波及就業者数で2.6倍の差にしかならないことから,雇用機会の創出の観点から,総計ベースでは農産物・農産加工品の輸移出収入の方が相対的に効果的であることを明らかにした。 第二に,本土復帰以降,沖縄農業の太宗作物をなすサトウキビは土地利用保全型の作物であり,サトウキビ作は地域農業構造および農地資源利用に大きく影響していることを数量的に明らかにした。 第三に,次のようなデータベース作成のための基礎的データの収集を行った。 (1)沖縄における社会・文化的特性など地域特性を析出するためのデータベース。 (2)沖縄における観光資源の経済的評価を行うためのデータベース。 (3)土地資源の地域特性,土壌流出の実態および観光資源・環境への影響を明らかにするための土壌サンプリング。
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