研究概要 |
1.野外観測について 岩手大学御明神演習林で傾斜地および水平面での融雪水の浸透についての観測を行うとともに,同演習林を流域とする赤沢川の流量および複数箇所での融雪に関する気象要素の観測を行った.この観測の一部は,1999年から継続して行っているものである. 水平面における融雪水の浸透の観測は,地表面に1×1mのライシメータを設置し,到達する融雪水を捕捉する方法を採用した.傾斜地での浸透の観測方法は,1×2mのライシメータを斜面上に設置し,側方浸透によってライシメータ外に流出する融雪水を除いた地表面到達水を観測するものである. これらの観測は水平面および傾斜面での融雪水の浸透に関する解析手法の構築,流域内の微細気象の推定,融雪流出解析を進めるためのものである. 2.融雪水の鉛直浸透について 熱収支法(倉島ら 1999)によって,積雪の表層付近で生ずる融雪水を推定し,これと前段で観測された水平面における地表面到達量と比較したところ,日単位での表層融雪水量は,地表面到達量と,おおむね良好に一致するが,その時間分布には大きな差が生ずることが明らかになった.浸透解析手法を確立するための端緒として,Colbeckが1970年代後半に確立した方法を適用した.その結果,浸潤線の衝突によって形成されるショックフロントが地表に到達する以前に生じた融雪水が無視されること,また融雪洪水解析の過程の一つとして,浸透解析を行うためには,ショックフロントの消長をリアルタイム掌握する必要があることなどの問題点が明らかになった.
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