研究概要 |
1.観測について 岩手大学御明神演習林内で傾斜地と水平面での融雪水の浸透量,融雪熱収支に関する気象要素,同地内を流域とする赤沢川の流量観測を継続して行った. 水平面における融雪水の浸透の観測は,地表面に1×1mのライシメータを設置し,到達する融雪水を捕捉する方法を採用した.傾斜地での浸透の観測方法は,1×2mのライシメータを斜面上に設置し,側方浸透によってライシメータ外に流出する融雪水を除いた地表面到達水を観測するものである.これらの観測は水平面および傾斜面での融雪水の浸透に関する解析手法の構築,流域内の微細気象の推定,融雪洪水解析を進めるためのものである. 2.融雪水の鉛直浸透と流出について 積雪の熱および質量の収支モデルによって積雪の表層付近で生ずる融雪量を推定した.推定値を観測された水平面における地表面到達量と比較したところ両者の時間分布に差が生ずることが明らかになった.観測地点における地表面到達量を推定した.推定にあたり,鉛直浸透に関する方程式を特性曲線法によって浸潤前線を追跡した.その結果,良好な再現性が得られた. 観測結果から降雨流出と融雪流出の違いを考察した.前者のハイエトグラフとハイドログラフのピーク時間差は3〜4時間であったが,後者では6〜8時間となっている.この時間差は,前段の検討結果と定性的に一致している.
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