数値振動を抑制する流束制限因子機能を有する、Chang-Moll EXPLICITスキーム(CMES)は、簡単なアルゴリズムにより移動跳水、常流、射流を含む非定常流れの数値解析が可能と期待できる。水輸送システムの実務的な解析のために、本研究では下記の点を明らかにした。(1)CMESは、2次精度であり、2段階Lax-Wendroff法の半分の打ち切り誤差である。(2)CMESは、流量、断面積、その時間(あるいは空間)微分項を未知量変数として有するので、整合性のある境界計算の扱い方を一般的に示し、代表的な境界条件について計算アルゴリズムを示した。(3)異なる勾配水路の結合点では、非定常流中に限界水深が形成される可能性がある。この場合、多くの解析では暗黙のうちに限界水深の条件を与えて計算を行っているが、理論的な根拠は不明であった。限界断面形成の条件を、CMESの差分方程式と境界条件が構成する非線形方程式の非線形分岐解として導き、簡明な計算アルゴリズムを明らかにし、CMESが射流、常流、限界断面、跳水を非定常流の中で、容易に扱いうることを示した。(4)円形・矩形など異種断面水路が接続する断面急拡・急縮部について、常流遷移を対象に段落ち、段上り部の状態を想定して、運動量方程式とCMESの差分方程式を連立して解く方法を提示した。水平円形断面水路中の移動跳水の計算と理論解との照合により、計算アルゴリズムのチェックの上に、円断面、段上(下)がり部、勾配の異なる3つの矩形断面水路が連続する開水路システムを対象に、非定常流解析をおこなった。円形断面水路の結合部の常流遷移(段上がり)は良好に解析できたが、断落ち部で一時的に限界水深が形成される場合、数値振動が発生、過渡的流れの解析としては問題があるので、新たなモデル化と計算アルゴリズムが必要である。
|