水田流域と、その水質のバックグラウンドを与える山林流域の水質測定点において、汚濁物質の挙動と水質浄化機構について検討した。特に、今年度は、水田流域への用水供給として重要な位置を占める、山林の水質・水文特性について重点的に考察した。また、流域対照法による水質・水文調査の結果を検討し、水田流域での水質浄化機構を理解する上でのモデル構築の要素の抽出を行った。試験流域の流量は、低平水時では1mm/d前後で推移するものが多かったが、降水が少なかった時の基底流出は、両流域とも0.5mm/d程度にまで減少していた。しかし、降水のある日には比較的鋭敏な流量増加がみられ、降水後は速やかに1mm/d程度にまで低減することが多いという結果を得た。水文流出率は、27〜29%となった。このことは、数値的には、降水量の7割が蒸発散として大気中に失われることを意味しているため、その妥当性について考察した。その結果、本試験流域では、極めて大規模な降雨時に量水ゼキをバイパスして流出する水量があるのではないかと疑われたが、研究目的の遂行に重大な支障はないものと考えられた。これらの結果を用いて、研究対象とした流域に存在する広葉樹の水質と負荷量の影響を明確化することを試みた。その結果、流域からの負荷量に及ぼす影響はかなり限定的であることがわかった。しかしながら、得られたデータは、主に基底流出成分であるため、直拷流出成分の負荷量がどのような挙動をとるかについては、今後の課題が残った。また、水質保全上の役割については、リターの分解速度の観点から、プラスの作用があるのではないかと考えられた。これらのことから、研究テーマである「水田流域におけるノンポイント汚染源負荷の浄化削減モデル」を構築するための一定の材料を得ることができた。
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