水田流域と、その水質のバックグラウンドを与える山林流域、茶園流域、それに循環灌漑水田流域の水質測定点において、汚濁物質の挙動と水質浄化機構について検討した。山林流域では、流域対照法による水質・水文調査の結果を検討し、水田流域での水質浄化機構を理解する上でのモデル構築の要素の抽出を行った。茶園流域では、窒素の負荷量が大きいことが考えられるため、施肥量と窒素負荷量の関係について検討した。その結果、窒素負荷量の多寡には、施肥時期よりも降水条件が大きく影響することなどがわかった。また、循環灌漑水田流域では、T-Nは、冬季には3〜4mg/L程度となり、採水日が降雨である場合には5mg/L程度となる傾向にあった。一方、夏期には1〜2mg/L程度に低下していた。これは、斐伊川からの用水(0.6mg/L程度)によって網場川の水が希釈されていたことによると考えられた。一方、リンとCODでは、窒素のような希釈効果は明確には現れず、採水日が降雨日であるサンプルの濃度は、晴天日のものよりもかなり高くなった。また、リンとCODでは、循環灌漑水田流域を流下するにしたがって水質低下の傾向がみられた。しかしながら、窒素では、あまり水質に変化はみられなかった。一方、DOでは、斐伊川の濃度が最も高く、これが流下するに従って溶存酸素が消費され、これが有機物分解に寄与していると考えられた。T-N、T-P、CODについて、流下過程における濃度変化と降水量との関係を調べると、必ずしも明確な関係は認められなかった。リンとCODは、懸濁物質との関連性が強いことから、これには、流速の緩慢な排水河川や遊水池での沈殿や好気分解が寄与していると考えられた。
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