研究概要 |
乾燥地・半乾燥地農業においては、蒸発に伴う塩類集積が深刻な問題となる。この問題を解決するために、蒸発過程における土壌中の水分・塩分・熱の同時移動メカニズムの解明と予測・制御が必要である。本研究では,これまでほとんど行われてこなかった不均一土壌系における水分・塩分・熱の同時移動特性を室内実験と数値実験によって明らかにする。また,蒸発過程で生じる水蒸気移動について,従来ほとんど考慮されなかった対流機構の検討を加える。 本年度の研究成果は,以下の通りである:1.昨年試作したサーモTDRプローブと土壌ポテンシャルメータを用いて土壌水分保持特性の測定を行った。その結果,約-50,000cmH_2O付近のポテンシャルまで高含水率側から連続的に測定可能であることが確認された。しかし,低水分付近では測定誤差が大きくなるという問題点も明らかになった。2.昨年試作した直方体土壌充填コラムに土壌を均一に充填し,サーモTDRを用いた計測システムで土壌水分,温度,溶質(塩類)の測定の動作確認を行った。ほぼ満足する結果を得た。現在,予備実験として,同システムを用いて均一土壌系における蒸発実験を継続中である。3.潅漑砂地圃場で観測されたデータと既存の数値モデルを用いて,土壌〜大気連続系における水分と熱の同時移動シミュレーションを行った。その結果,使用したモデルは現象をある程度の精度で再現した。しかし,不飽和土壌特性の不確定さ,水蒸気対流移動モデルの組み込み,大気モデルの差分化などの課題が明らかになった。 研究成果の一部を発表するためと研究に有意義な情報と助言を得るために,関係学会(水文・水資源学会2001年度研究発表会)に出席し研究打ち合わせを行った。 今年度実施予定であったサーモTDRによる有機性汚染物質の測定については,実施できなかったたため,来年度に行う予定である。(781字)
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